研究会概要

日本脳脊髄モニタリング研究会発足の経緯と今後の活動について


日本脳脊髄術中モニタリング研究会代表世話人
齋藤貴徳

この度日本脳脊髄モニタリング研究会のホームページを立ち上げるにあたりその設立の趣旨と今後の活動についてご挨拶させていただきます。

 我が国の術中モニタリングの歴史は、当時の和歌山県立医大整形外科:玉置哲也先生、東京大学整形外科:黒川先生、新潟大学麻酔科:下地先生などが世界に先駆けて開発された硬膜外電極を使用した脊髄刺激―脊髄記録誘発電位の実用化で幕が開き、その後、当時の日本大学整形外科:町田正文先生が報告された脊髄刺激―筋記録が登場し徐々に普及してまいりました。

 一方、米国では日本と異なり、神経内科と検査技師の方が術中モニタリングを実施してきた経緯があり、非侵襲的な短潜時体性感覚誘発電位が使用されてきました。しかし、近年になり経頭蓋電気刺激法が、トレイン刺激法の応用と、シナップスや神経筋接合部での減弱効果が少ないプロポホール麻酔の普及により実用化され、長年の夢であった運動神経のモニターが非侵襲的に可能となり、日本にも米国にもほぼ同時に導入され、新たな時代に突入することとなりました。この経頭蓋電気刺激―筋誘発電位はSEPや脊髄刺激脊髄記録と違い、記録に関する技術的ハードルが低く容易に記録できるため急速に普及しました。しかし、基本的には麻酔や生理的条件で不安定になりやすく、false positiveが多いため、信頼性には乏しい欠点があります。これを克服すべく各種の新たな手法が考案されつつありますが、このような各種モニタリングの特徴を十分に把握した上で臨床に供して行く必要があります。

 しかし、実際にはこの経頭蓋電気刺激筋記録誘発電位が出現し実用化された後に導入した施設が多く、基礎的な電気生理学的知識を基盤とせず実施した場合、波形の判読に誤解が生じ判断を誤ったり、不用意な合併症が生じたりする危惧があります。これらを防ぐためには現在この術中モニタリングについて指導的立場にある施設が集学的に集まり専門的知識のもと、本法の実施基準を決定することが必要と考えられてきました。米国ではすでに脊椎手術においてはモニタリングを実施せずに何らかの神経合併症が出た場合、法的な処罰を免れないような現実があることより、我が国でも将来同様の環境下に我々脳脊髄手術を実施している術者が置かれることが予想され、早急な対応がせまられていると考えています。すなわち現在の術中モニタリングは脊椎疾患を始め、脳疾患、大血管疾患、などすでにいろいろな科で実施されておりこれらのモニタリング全てについて我が国のスタンダードを決定して行くする必要があると考えます。日本臨床神経生理学会では、日本で唯一これら全ての診療科の電気生理学的研究をしている研究者が集まる学会として、平成24年11月“脳脊髄モニタリング委員会”を発足させ活動を開始しております。今後、委員会活動により術中モニタリングの一層安全な普及が図られることが期待されています。我々術中モニタリングに携わるものは全て日本神経生理学会に所属し、委員会活動をサポートすることが望ましいと考えます。

 このような情勢の中、我々は日本臨床神経生理学会の脳脊髄モニタリング委員会とは別組織として本研究会を立ち上げました。本研究会は整形外科、脳外科、麻酔科、血管外科を初めとして、日本に於いて術中脳脊髄神経モニターを実施している全ての臨床科と、それをサポートしている生理学などの基礎系の研究家や、術中モニタリングを臨床の現場で支えてくれている臨床検査技師、臨床工学技士の皆様を中心として広く会員を募集し、日本における術中モニタリングの現状や問題点を集学的に議論する場を提供することにより我が国における術中モニタリングの発展と普及を図ることを目的としております。学会では議論しにくいような技術的な問題や、まだ明らかになっていない問題点の理論的な背景に関する考え方などを学閥を越えて自由に話し合える研究会にしたいと思っています。この目的達成のために学術研究会を年一回開催すると共に、術中モニタリングの普及を図るため、検査技師の皆様をはじめとしたco-medicalの皆様の教育活動や、各種モニタリングに関する情報提供なども行う予定です。

 我が国で術中モニタリングをすでに施行している方々や、今後実施希望の施設の先生方、また今後この分野にかかわる仕事を希望しておられるco-medicalの方々など、どなたでも会員になれる研究会です。日本脳脊髄術中モニタリング研究会やハンズオンの開催案内などをはじめ、脳脊髄術中モニタリングに関する講演会や教育研修会など我が国におけるもモニタリングに関する可能な限りの情報を本ホームページに掲載させていただくとともに、会員用メーリングリストで情報提供させていただきますのでご活用下さい。では、本研究会への皆さんの積極的なご参加をお待ちしております。

■日本脳脊髄術中モニタリング研究会 会則

第1条 名称
本会は日本脳脊髄術中モニタリング研究会と称する。

第2条 目的
日本脳脊髄術中モニタリング研究会は会員の脳脊髄術中モニタリング法の教育と普及、健全な発展への寄与、地域社会に貢献することを目的とする。併せて各病院、医院間と研究機関との情報交換を行い、脳脊髄術中モニタリング領域の診断、治療における連携の円滑をはかり、広く情報を収集し会員の知識を高めるものとする。

第3条 活動
日本脳脊髄術中モニタリング研究会は前条の目的を達成するために次の事業を行う。
 1) インターネット症例検討やグループミーティングを随時開催する。
 2) 学術集会を年1回程度実施する。

第4条 会員
日本脳脊髄術中モニタリング研究会の会員は次の通りとする。
 1)一般会員:日本脳脊髄術中モニタリング研究会の目的のために賛同した脳脊髄術中モニタリング法の実施および臨床研究に関心を持つ医師、検査技師とする。
 2)賛助会員:日本脳脊髄術中モニタリング研究会の事業を賛助するために世話人会の承認を受けて入会した個人または団体。

第5条 会費
 1) 日本脳脊髄術中モニタリング研究会は研修会毎に別に定めた参加費を徴収するものとする。
 2) 賛助会員は、年会費一口50,000円とし、何口でも加入できるものとする。

第6条 役員および運営
本研究会は会の運営を円滑に行うために以下の役員をおく。
 1)代表世話人 1名
 2)世話人 若干名
 3)庶務・会計 1名
 4)監査 1名

第7条 総会
総会は原則として年1回とし学術集会開催時に開催する。総会の議長は代表世話人がこれにあたる。
2 総会は次に掲げる事項を審議し議決する。
 1)学術集会の開催に関する事項
 2)予算、決算に関する事項
 3)役員の選任、退任に関する事項
 4)会則等の改正に関する事項
 5)その他の重要事項
3 総会の議事は出席者の過半数の賛成をもって承認される。

第8条 会計

 1)日本脳脊髄術中モニタリング研究会の経費は会費および寄付金をもってこれにあてる。
 2)世話人のうち1名を会計責任者とする。
 3)本研究会の会計年度は4月1日より翌年3月31日までとする。

第9条 附則
 1) 日本脳脊髄術中モニタリング研究会の事務局を関西医科大学整形外科学講座内におく。
 2) 本会則については平成26年6月1日より施行する。
 (平成27年6月1日会則改正)
 ( 平成28年6月1日会則改正)
 (平成29年4月1日会則改正)
 (令和4年11月10日会則改正)
 

■役員名簿

<代表世話人>

関西医科大学整形外科 齋藤貴徳


<世話人>(50音順)

関西医科大学整形外科
岐阜大学麻酔科
関西医科大学整形外科
日本大学脳神経外科  
静岡赤十字病院整形外科
奈良県立医科大学区麻酔科
東京医科歯科大学整形外科
諏訪赤十字病院脳神経外科
東北医科薬科大学脳神経外科
東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部
奈良医大中央臨床検査部
関西医科大学整形外科
和歌山県立医科大学名誉教授
国立病院機構西新潟中央病院脳神経外科
山口県立総合医療センター 脳神経外科
Brain Function
大阪警察病院脳神経外科
アイオワ大学神経科
東京女子医大東医療センター整形外科
国立循環器病センター麻酔科
安藤宗治
飯田宏樹
板倉毅
大島秀規
小川潤
川口昌彦
川端茂徳
後藤哲哉
佐々木達也
杉山邦男
高谷恒範
谷口愼一郎
玉置哲也
福多真史
藤井正美
丸田雄一
本山靖
山田徹
山本直也
吉谷健司